A-GPT PROJECT

AIとの二人三脚で
LLMの歴史を爆速で駆け抜ける

ChatGPT のような AI は、どうやって言葉を覚えるのでしょうか。 このプロジェクトでは、13個の単語しか知らない、いちばん小さなモデルから始めて、 ChatGPT の祖先にあたる GPT-2 の大きい版に近い大きさまで、10個のモデルを順番に作っています。

既製のモデルを使わず、プログラムは一から作成(AIと共同作成)。学習は、モデル9までは Mac 1台で行い、モデル10ではじめてクラウドの GPU を借りました。

作ったモデルの数
1個 → 10個
パラメータ数
1,361個 → 10.7億個
学習させた文書
約1万字 → 約360億字

01

やっていること

AI に言葉を覚えさせる手順は、実はとてもシンプルです。各モデルで、この5つを繰り返しています。

  1. 文章を集める青空文庫の小説、Wikipedia、Web の文章など。モデルが進むほど、たくさん読ませます(モデル8では約44億字)。
  2. 言葉を小さく分ける文章を「トークン」という小さなかたまりに分けます。AI にとっての「1文字」です。
  3. 「次の言葉当て」を繰り返す文章の途中までを見せて、次のトークンを当てさせます。外れたら少し直す。これを何万回も繰り返すのが「学習」です。
  4. 賢さを測る学習に使っていない文章をどれだけ当てられるか(損失)と、約190問の常識テストで測ります。
  5. 会話を教える「質問と答え」の例で追加の練習をさせて、質問に答えられるチャット版を作ります(モデル6から)。

02

モデルの進化

モデル1から順番に、脳を大きくし、読ませる文章を増やしてきました。 それぞれのページで、実際に文章を書かせたり、常識テストの結果を見たりできます。

読み込み中...

03

(参考)公開されている日本語モデルとの比較

rinna 社が2021年に公開した日本語の GPT-2(small・medium)と、同じ物差しで比べました。 rinna small はモデル8と、rinna medium はモデル9と、ほぼ同じ大きさです。

モデル7モデル8モデル9rinna smallrinna medium
パラメータ数0.42億1.1億3.35億1.1億3.4億
学習した文章青空文庫・Wikipedia青空文庫・Wikipedia・Web青空文庫・Wikipedia・WebWikipedia・Web(CC-100)Wikipedia・Web(CC-100)
1文字あたりの損失(小さいほど、次の文字を上手に予測できる)
青空文庫2.9392.8222.7373.2363.121
Wikipedia2.1842.0631.9782.1311.991
Web2.7102.0831.8672.0551.980
常識テスト(全189問。多いほど知識がある)
正解数8291112117126

緑の太字が、その行で一番良い値です。

同じ書き出しで書かせた文章

モデル8(1.1億)日本の首都は東京都。一大河川河川敷である東京タワーから、東京都のシンボルとして親しまれている。
rinna small(1.1億)日本の首都は東京です。東京は多くの魅力的な駅が点在し、街には活気があり、活気のある街です。
rinna medium(3.4億)日本の首都は東京ですが、東京は観光で来る人も多いため、観光名所がたくさんあります。旅行の帰りに、観光名所に立ち寄ると、その場所の魅力に圧倒されるでしょう。
モデル8(1.1億)秋の食べ物は、「夏野菜の炒め物」。そんな食べ物の種類や、おすすめの人気レシピも紹介しました。ぜひ最後までチェックしてみてくださいね。
rinna small(1.1億)秋の食べ物は、食べ物屋さんに入って、お腹いっぱい食べるだけ。こんな感じで、今年はちょっとお菓子を買ったので、お菓子を食べました(^_^;)
rinna medium(3.4億)秋の食べ物は、栄養価が高く、そして、独特の風味があって、とってもおいしいですよね♪そこで、今回は、秋の味覚である栗を使った料理をご紹介します!

それぞれ、ランダムに書かせた数通りの中から1つを選んで載せています(不適切な内容が混ざった文章は除きました)。

わかったこと

比べ方: 学習に使っていない同じ段落(青空文庫 約157万字・Wikipedia 約271万字・Web 約406万字)で測りました。 rinna は Wikipedia を学習しているので、この Wikipedia の段落を学習で見ている可能性があります(そのぶん有利)。 青空文庫は、rinna は学習していないので、モデル7・8が有利です。 rinna のモデル: japanese-gpt2-small・japanese-gpt2-medium(MIT ライセンス)。

訂正(2026年10月10日): 9月に載せた rinna の損失は、rinna の説明どおりに英字を小文字にしてから読ませる処理が、測るプログラムの不具合で効いていない状態で測った値でした。 そのため rinna に不利な値(Wikipedia・Web で0.08〜0.18大きい)になっていました。正しく測り直した値に直し、それに合わせて「わかったこと」も直しました(モデル9の Wikipedia での差は約0.19 → 約0.01)。常識テストの正解数は変わりません。

1B 級のモデルとの比較(モデル10)

約10億パラメータのモデル10は、2022〜2024年に公開された同じくらいの大きさの日本語モデルと比べました。 上と同じ段落に加えて、どのモデルも学習していない文章として、2026年10月に新しく作られた Wikipedia の記事(393記事・約57万字)でも測りました。

モデル10rinna 1BLLM-jp-3 980MLLM-jp-3 1.8B
パラメータ数10.7億13億9.9億18.7億
公開・完成2026年2022年2024年2024年
学習した量約215億トークン−約2.1兆トークン約2.1兆トークン
1文字あたりの損失(小さいほど、次の文字を上手に予測できる)
青空文庫2.5912.7252.9752.871
Wikipedia1.7691.8512.0221.915
Web1.7471.8401.9521.874
新しい Wikipedia1.7321.7491.7681.679
常識テスト(全189問)
正解数130129147155
常識テストの損失0.9570.9580.7220.556

すべて2026年10月に、このプロジェクトで同じやり方で測りました。rinna 1B は、語彙に無い文字が約0.5%あり、その文字は「知らない文字」の印1つで予測すればよいので、少し有利です。 モデル: rinna japanese-gpt-1b(MIT ライセンス)・LLM-jp-3 980M・LLM-jp-3 1.8B(Apache 2.0 ライセンス)。

04

(参考)LLM 発展の歴史

ここ10年ほどで、LLM は急速に大きく、賢くなりました。2024年からは「考えてから答える」モデルや、パラメータを公開したモデルも大きく伸びています。A-GPT のモデル8は、2019年の GPT-2 small と同じくらい、モデル9は GPT-2 medium と同じくらい、モデル10は GPT-2 large と XL の間の大きさです。

発表年モデル名パラメータ数特徴
2017TransformerGoogle約2億今の LLM すべての土台になった仕組み(「どの言葉に注目するか」を計算する)。A-GPT も、この仕組みで作っています
2018GPTOpenAI約1.2億たくさんの文章で「次の言葉当て」を練習させてから、仕事ごとに追加で練習させる、という作り方を示した
2018BERTGoogle約3.4億文章を「書く」のではなく「理解する」ことが得意。検索エンジンなどに使われた
2019GPT-2OpenAIsmall 約1.2億medium 約3.5億large 約7.7億XL 約15億自然な文章を長く書けるようになり、「悪用が心配」と、大きい版の公開を段階的に行った。4つの大きさがあり、いちばん小さい small は、A-GPT のモデル8と同じくらいの大きさ
2020GPT-3OpenAI約1,750億GPT-2 の100倍以上。いくつか例を見せるだけで、翻訳や要約など、いろいろな仕事ができるようになった
2021japanese-gpt2rinna約1.1億〜3.4億日本語で学習した GPT-2 を、誰でも使えるように公開した
2022ChinchillaDeepMind約700億「パラメータ数の約20倍の量の文章で学習させるのが効率がよい」という目安を示した。A-GPT もこの目安で学習量を決めています
2022ChatGPTOpenAI約1,750億(推定値)会話の練習と、人の評価を使った仕上げで、質問に答えるのが上手になった。誰でも使えるサービスとして公開され、世界中に広まった
2023GPT-4OpenAI約1.8兆(推定値)画像も読めるようになり、難しい試験でも高い点を取るようになった
2023LLaMAMeta約70億〜650億研究者向けにパラメータを公開し、誰でも改良できるモデル(オープンなモデル)が広がるきっかけになった
2023LLM-jp-13BLLM-jp(国立情報学研究所など)約130億日本の大学・研究機関が協力して、日本語を中心にゼロから作ったモデル
2024Claude 3.5 SonnetAnthropic約1,750億(推定値)文章を書くことや、プログラミングが得意な会話 AI。安全性を重視して作られている
2024Llama 3.1Meta約4,050億パラメータを公開したモデルとして当時最大。性能でも、GPT-4 などの非公開のトップモデルに迫った
2024o1OpenAI約3,000億(推定値)答える前に、じっくり考える(推論する)ようにしたモデル。数学やプログラミングが大きく伸びた
2024LLM-jp-3 172BLLM-jp(国立情報学研究所など)約1,720億GPT-3 と同じくらいの大きさの国産モデル。学習に使ったデータまで含めてすべて公開したモデルとして、世界最大級
2025DeepSeek-R1DeepSeek(中国)約6,710億(一度に使うのは約370億)o1 に並ぶ「考える」力を持ちながら、パラメータを公開し、使う費用もずっと安くした。世界に大きな驚きを与えた
2025Kimi K2Moonshot AI(中国)約1兆(一度に使うのは約320億)パラメータを公開したモデルで、初めて1兆に届いた。自分で道具を使って作業を進める(エージェント)ことを重視
2025gpt-ossOpenAI約210億・約1,170億OpenAI が GPT-2 以来はじめてパラメータを公開したモデル。小さい方は、ノートパソコンでも動く
2025GPT-5OpenAI非公開(信頼できる推定値なし)すばやく答えるモデルと、じっくり考えるモデルを1つにまとめ、質問に合わせて自動で切り替える
2025Gemini 3Google非公開(信頼できる推定値なし)文章・画像・音声・動画をまとめて扱い、多くの試験で当時の最高点を記録した
2026LLM-jp-4LLM-jp(国立情報学研究所など)約86億〜約332億約12兆トークンで学習した国産モデル。日本語の力では、同じくらいの大きさの海外モデルと同等以上
2026Claude Opus 5Anthropic非公開(信頼できる推定値なし)本1冊よりずっと長い、約100万トークンを一度に読める。長い仕事を任せられるようになった
2026GPT-6OpenAI非公開(信頼できる推定値なし)パソコンの操作やプログラミング、科学の仕事で最高水準。サイバー攻撃などへの悪用を防ぐ安全対策を強めてから、段階的に公開した
2026A-GPT モデル8このプロジェクト約1.1億既製のモデルを使わず、プログラムは一から作成(AIと共同作成)。Mac 1台で学習。GPT-2 small と同じ大きさ
2026A-GPT モデル9このプロジェクト約3.4億既製のモデルを使わず、プログラムは一から作成(AIと共同作成)。Mac 1台で学習。GPT-2 medium と同じ大きさ(2026年10月完成)
2026A-GPT モデル10このプロジェクト約10.7億既製のモデルを使わず、プログラムは一から作成(AIと共同作成)。はじめてクラウドの GPU(NVIDIA B200)を借りて学習。GPT-2 large と XL の間の大きさ(2026年10月完成)

パラメータ数は、発表された値のおおよその数です(いくつかの大きさがあるものは、代表的な値か範囲)。「推定値」は、開発元が公表していないため、報道や研究者の推測(論文での推定など)による値で、実際とは大きくちがう可能性があります。最近のトップモデルは、パラメータ数を公表しておらず、信頼できる推定値もほとんどありません。「一度に使うのは」とあるモデルは、たくさんの「専門家」の中から、言葉ごとに一部だけを使う作り(MoE)で、全体は大きくても計算は軽くなります。2024年以降の内容は、2026年9月にインターネットで調べたものです。

05

用語集

モデルの説明に出てくる言葉です。タップすると説明が開きます。

06

(参考)LLM の学習程度をはかる

モデルがどのくらい学習できたかは、主に「損失」という数字で測ります。このプロジェクトで使っている損失の見方を説明します。

損失とは

LLM は、文章の続きとして「次に来るトークン」を、確率で予想します。損失は、本当に来たトークンに、どれだけ低い確率しか付けられなかったか(外れ具合)を表す数字です。 学習に使っていない文章(検証データ)の、すべてのトークンで平均して測ります。小さいほど、上手に予想できています。

本当に来たトークンに付けた確率そのトークンの損失
100%(完全に当てた)0
50%0.69
10%2.30
1%4.61
0.01%9.21

損失 = −log(確率)。確率を対数(自然対数)にしてマイナスを付けたものです。

1トークンあたりの損失と、1文字あたりの損失

1トークンあたりの損失は、トークン1つごとの外れ具合の平均です。ところが、トークンの大きさはモデルによってちがいます (モデル4は平均1.4文字、モデル8は平均1.8文字で1トークン)。大きなトークンほど、当てるのが難しいので、1トークンあたりの損失は大きく出ます。 そこで、外れ具合の合計を、文章の文字数で割った「1文字あたりの損失」を使うと、トークンの分け方がちがうモデルどうしでも比べられます。

語彙1トークンあたり1トークンの文字数1文字あたり
モデル43,0004.731.383.42
モデル510,0005.751.703.39
モデル616,0005.081.693.00
モデル732,0005.321.812.94
モデル832,0005.081.802.82

青空文庫の同じ検証データ(52作品)で測った値。1トークンあたりの損失は、語彙を増やしたモデル5で一度大きく上がっていますが、 1文字あたりの損失で見ると、モデルが進むたびに、きちんと下がっています。

平均候補数(損失と、迷っている候補の数)

損失は、そのままでは実感しにくい数字です。そこで、損失を X、平均候補数を Y として、次の指数関数で計算すると、 「次に来るものを、平均で何個の候補の中から迷っているか」に直せます。

Y = eX

e は約2.718の数です。Y を平均候補数(専門用語ではパープレキシティ)と呼びます。 たとえば損失 X が2.30なら、Y = e2.30 ≈ 10 で、10個の候補の中から迷っているのと同じくらいの当たり具合です。

損失平均候補数目安
10.3732,000個当てずっぽう(語彙32,000から1つ)
6.911,000個
4.61100個
3.4030個モデル4・5(青空文庫)
3.0020個
2.7115個モデル7・8(青空文庫)
2.3010個
2.007.4個モデル8・9(Web・Wikipedia)
1.615個最先端の AI(1文字あたり、推定 0.7〜1.6)
1.103個
0.692個コインの裏表くらいの迷い

表の目安の欄は、1文字あたりの損失の例です。最先端の AI の値は公表されていないため推定です。 文章には本質的に予測できない部分(次に誰が何を言うかなど)があるので、どんなに賢いモデルでも損失は0にはなりません。

モデルごと・文章の種類ごとの損失(1文字あたり)

小さいほど、次の文字を上手に予想できています。小さな文字は、平均候補数です。

モデルWebWikipedia青空文庫
モデル40.016億4.0557個4.4989個3.4331個
モデル50.021億4.1463個4.67107個3.3930個
モデル60.17億2.9920個2.4411個3.0020個
モデル70.42億2.7115個2.188.9個2.9419個
モデル81.1億2.088.0個2.067.9個2.8217個
rinna small1.1億2.067.8個2.138.4個3.2425個
rinna medium3.4億1.987.2個1.997.3個3.1223個
モデル93.35億1.876.5個1.987.2個2.7415.4個
LLM-jp-3 980M9.9億1.957.0個2.027.6個2.9819.6個
rinna 1B13億1.846.3個1.856.4個2.7315.3個
LLM-jp-3 1.8B18.7億1.876.5個1.926.8個2.8717.7個
モデル1010.7億1.755.7個1.775.9個2.5913.3個

緑の太字は、一番良い値です。すべて、学習に使っていない同じ段落(知らない文字を含む段落を除いたもの)で測りました。モデル4・5は語彙が小さく、Wikipedia や Web の文章に出てくる文字の多くを知らないので、損失がとても大きくなっています。

語彙の広さと比べると、どこまで絞り込めているか

モデルは、次のトークンを、自分の語彙(知っているトークン)全部の中から選びます。 1トークンあたりの損失から平均候補数を出して、語彙全体と比べると、「何万個の中から、何%まで絞り込めているか」がわかります。

モデル8なら32,000個のトークンから74個(0.23%)まで絞り込めていることがわかります。 選ばれた74個の候補は、辞書からランダムに選ばれたものではなく、高次元ベクトル空間上で「文脈的にあり得る、意味が近い単語」の集合体です。

モデル青空文庫Web
モデル4語彙 3,000113個語彙の 3.8%−
モデル5語彙 10,000313個語彙の 3.1%−
モデル6語彙 16,000160個語彙の 1.00%−
モデル7語彙 32,000204個語彙の 0.64%−
モデル8語彙 32,000161個語彙の 0.50%74個語彙の 0.23%
モデル9語彙 32,000136個語彙の 0.42%47個語彙の 0.15%
モデル10語彙 32,000105個語彙の 0.33%36個語彙の 0.11%

平均候補数 = e^(1トークンあたりの損失)。モデル8の74個(0.23%)は、Web の文章で測った値です。

文章の質を決める箇所では、候補はもっと多い

平均候補数は、すべての文字の「外れ具合」の平均から計算した値です。 ところが文章には、助詞の「の」「は」や「。」のように、ほぼ確実に当てられる文字がたくさんあります。そうした文字は損失がほぼ0(候補1個)なので、 平均を下げています。そのぶん、文章の質を本当に決める箇所(どの言葉・どの事実を選ぶか)では、モデルは平均よりずっと多くの候補の中で迷っています。

仮に、文章の質を決める箇所が全体の40%で、残りの60%はほぼ確実に当てられるとします。 すると、平均の損失 X は、決め手の箇所の損失の0.4倍になります。決め手の箇所の候補数を Y とすると、

Y = eX ÷ 0.4 = e2.5X

平均候補数(eX)より、ずっと急な曲線になります。損失が0.1下がるだけで、決め手の箇所の候補数は約22%減ります(e−0.25 ≈ 0.78倍)。 損失のわずかな改善が、文章の質を決める箇所での、大きな絞り込みにつながります。

横軸: 1文字あたりの損失 X(右へ行くほど小さい = 学習が進んでいる)/ 縦軸: 決め手の箇所の候補数 Y。点にふれると値が出ます。

1文字あたりの損失 X平均候補数 eX決め手の箇所の候補数 Y目安
2.816個1,097個モデル7・8(青空文庫)
2.613個665個
2.411個403個
2.29.0個245個
2.07.4個148個モデル8(Web、約2.08)・rinna medium(Web、約1.98)
1.86.0個90個モデル9(Web、約1.87)・モデル10(Web、約1.75)
1.65.0個55個
1.44.1個33個
1.23.3個20個
1.02.7個12個最先端の AI(推定)
0.82.2個7.4個
0.61.8個4.5個

「40%」は、考え方を示すための仮の数字です。実際には、文章や言葉によって、当てやすさは連続的にちがいます。

07

(参考)LLM の知識をはかる

損失は「次の文字をどれだけ上手に当てられるか」を測る物差しでした。でも、文章を上手に続けられることと、正しい知識を持っていることは、同じではありません。このプロジェクトで、モデルの知識をどう測っているかを説明します。

常識テストのしくみ

常識テストは、地理・歴史・生活・科学など9分野、全189問の4択問題です。ただし、モデルに「問題文」を読ませて答えさせるのではありません。 「日本の首都は」のような書き出しのあとに、4つの選択肢のどれが続くのが一番自然かを、モデルの確率で比べます。

選択肢ごとに、その言葉が続く確率(1トークンあたり)を計算し、4つの合計が100%になるように割合に直します。一番高い選択肢が、モデルの答えです。 誰も答えを教えていないので、正解できたら、それは文章を読むだけで身につけた知識です。

「日本の首都は」東京(正解)大阪京都名古屋
モデル765%19%9%6%
モデル864%26%8%2%
モデル990%6%2%2%
rinna small91%5%3%1%
rinna medium97%2%1%0%
rinna 1B9%19%65%6%
LLM-jp-3 980M94%3%3%1%
LLM-jp-3 1.8B97%1%2%0%
モデル1091%3%5%1%

緑の太字が正解を選んだモデル。太字の黒は、まちがった選択肢を選んだもの。

ほとんどのモデルが「東京」を選ぶ中、rinna 1B だけは「京都」を選びました。rinna 1B に「日本の首都は」の続きを書かせると、 「日本の首都は京都か、大阪か—日本思想史」のような、本の題名らしい文章を書きます。このテストが測っているのは、 「事実だと思っているか」ではなく、「その続きが文章として自然か」です。ほとんどの場合、自然な続きは正しい事実と一致しますが、いつもではありません。

正解数だけでは見えないこと

正解数はわかりやすい物差しですが、弱点が2つあります。

常識テストの損失

そこで、正解・不正解に丸める前の、正解の選択肢に付けた確率 p を使います。文章の損失と同じように、−log をとって、全問で平均します。

損失 = 平均(−log p)

正解に付けた確率 pその問題の損失(−log p)人間でいうと
100%0完全にわかっている
90%0.11自信を持って正解
50%0.69二択まで絞れた
25%1.39当てずっぽう(4択)
5%3.00まちがって覚えている
0.1%6.91まちがいを強く信じている

当てずっぽう(どの問題も25%)なら、損失は log 4 ≈ 1.386 です。全問に自信を持って正解すれば、0 に近づきます。 正解数とちがって、「惜しい外れ(正解に40%)」と「大外れ(正解に1%)」をきちんと区別し、とくに自信を持った外れを強く数えます。

文章の損失を「平均候補数」に直したのと同じように、e損失 を計算すると、4択を平均で何択まで絞れているかがわかります。 たとえば損失 0.556 なら e0.556 ≈ 1.7 で、4択を約1.7択まで絞れている計算です。 反対に、4より大きくなる(たとえばモデル7の4.4択)のは、当てずっぽうよりも迷っている、つまり、まちがった選択肢に自信を持ってしまっている状態です。

モデルごとの比較

モデル正解数常識テストの損失平均で何択まで正解に付けた確率の平均
モデル70.42億821.4884.4択35.0%
モデル81.1億911.3794.0択40.4%
rinna small1.1億1171.0602.9択51.1%
モデル93.35億1121.1393.1択49.6%
rinna medium3.4億1260.9012.5択56.8%
LLM-jp-3 980M9.9億1470.7222.1択64.2%
モデル1010.7億1300.9572.6択57.4%
rinna 1B13億1290.9582.6択56.9%
LLM-jp-3 1.8B18.7億1550.5561.7択68.6%
当てずっぽう約471.3864択25%

正解数と常識テストの損失は、ほぼ一直線の関係になります(モデル10より前の8つのモデルで、正解数 ≈ 202 − 80 × 損失。モデル10は、この式で125問のところ、実際は130問でした)。 損失が0.1下がると、正解は約8問増える計算です。モデル7・8は、正解数は当てずっぽうより多いのに、損失は当てずっぽう(1.386)より悪いか、ほぼ同じです。 外すときに、まちがった選択肢へ強い自信を持っているためです。

問題ごとの自信の内訳

正解に付けた確率で問題を分けると、「どの問題も半分くらいわかっている」のか、「わかる問題と、まちがって覚えている問題に分かれている」のかが見えます。

正解に付けた確率モデル8モデル9モデル10rinna mediumLLM-jp-3 1.8B
80%以上(自信を持って正解)2443625882
50〜80%4050474960
30〜50%(迷い)4434343621
15〜30%3727212514
15%未満(確信して外れ)4435252112

確率が一番高い選択肢がモデルの答えになるので、正解に50%以上を付けた問題は必ず正解、25%未満の問題は必ず不正解です。30〜50%の問題は、正解したりしなかったりします。

正解に付けた確率の平均との関係

「正解に付けた確率の平均」と「常識テストの損失」は、どちらも同じ p から計算するので、独立した物差しではありません。ちがうのは、平均のとり方です。 確率の平均では、大外れ(p ≈ 0)も「0に近い1問」にすぎませんが、損失では −log p がいくらでも大きくなります。そのため、いつも次の関係が成り立ちます。

損失 ≥ −log(p の平均)

モデル確率の平均−log(確率の平均)常識テストの損失差
モデル949.6%0.701.1390.44
モデル1057.4%0.560.9570.40
rinna medium56.8%0.570.9010.33
LLM-jp-3 1.8B68.6%0.380.5560.18

この差が大きいほど、自信を持って外す問題が多いということです。モデル9と rinna small は、確率の平均ではほぼ同じ(49.6% と 51.1%)ですが、 損失はモデル9の方が少し悪く(1.139 と 1.060)、まちがった思い込みが少し多いことがわかります。

文章の損失と知識は、別のもの

モデルWeb の損失(1文字あたり)常識テストの正解数
モデル82.08391
rinna small2.055117
rinna medium1.980126
LLM-jp-3 980M1.952147
LLM-jp-3 1.8B1.874155
モデル91.867112
rinna 1B1.840129
モデル101.747130

Web の文章の損失では、モデル10が一番よく、モデル9も上から3番目ですが、知識(正解数)では、LLM-jp-3 の2つに大きく届きません。モデル9は、損失では上位なのに、知識は下から2番目です。損失の順番と、知識の順番は一致しません。文章の文字の大部分は、「の」「は」「です。」のような、 言い回しや文法で決まる部分です。損失は主に「その種類の文章の書き方に、どれだけ慣れているか」で決まり、事実を当てる部分(「日本の首都は東京」の「東京」)は、全体のほんの一部です。 モデル9・10は、この検証データと同じ出どころの Web の文章で学習しているので、書き方には慣れています。一方、LLM-jp-3 は約2.1兆トークン(モデル9の約300倍)の、はるかに幅広い文章で学習していて、知識の量で大きく上回ります。

分野ごとに見ると

分野問題数モデル9モデル10LLM-jp-3 1.8B
歴史・文化41253138
数・時間215812
地理29212627
科学21101116
生活22141320
動物21111314
季節・自然19151717
言葉11888
スポーツ4333

この測り方の限界

知識を増やすには

研究から、次のようなことがわかっています。

すべての数字は、学習に使っていない同じ189問で、同じやり方(書き出しに続く選択肢の、1トークンあたりの確率を比べる)で測ったものです(2026年10月)。 rinna と LLM-jp-3 は、公開されている学習済みのモデルを、このプロジェクトで測り直しました。 研究の出典: Allen-Zhu・Li「Physics of Language Models」(知識の覚え方と、パラメータあたりの知識の量)、Gunasekar ほか「Textbooks Are All You Need」(教科書のような文章での学習)、Maini ほか「Rephrasing the Web」(文章の書き直し)。